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食品のカビについて

 

 

 
 モチのPenicillium sp.  パンのCladosporium sp.

我国は地理的に温帯地方の島国で気候が温暖多湿のために、多くの種類のカビの生えやすい環境が整っています。

カビとは細菌(バクテリア)やウイルスと同じく微生物の仲間であり,微生物学的には「真菌類」と呼ばれています。

古くからカビをうまく利用してさまざまな種類の発酵食品を考えて、その甘みを食してきました。

また、カビは抗生物質などを代謝産物として産生することから医薬品の開発にも用いられています。

しかし、反面、カビは食品中で増殖して異味、異臭等の品質低下を引き起こし、種類によっては発がん性のカビ毒(マイコトキシン)を産生します。

さらに、カビは健康面においてアレルギー喘息、水虫などの原因となり、環境面では住居の浴室、台所、じゅうたんなどにもよく発育してそれらを劣化させます。

 

このように私たちにとって、カビは有益と有害の両面をもっています。

そこで、これらのなかで食品を対象としたカビについて取り上げ、ご紹介します。

 

主なかびの種類

Penicillium sp.(ペニシリウム) アオカビ

食品から頻繁に検出され、青緑色の集落を作ります。種類は非常に多く、その中には抗生物質のペニシリンを作ったり、チーズの製造に用いられるものもあります。

また、黄変米の原因となったり、カビ毒を産生するものも含まれます。多くの種類の食品、ほこりや土壌など環境中に広く分布しています。

 

Cladosporium sp.(クラドスポリウム) クロカビ(クロカワカビ)

住居内に黒色の集落があればほとんどがこのカビで、最も多く空中にほこりとして浮遊し、木材、皮革、繊維など多くのものを劣化させます。多くの種類の食品からも頻繁に検出されますが、かび毒の報告はありません。

 

Aspergillus sp.(アスペルギルス) コウジカビ

日本酒、醤油など醸造に用いられるもの、発ガン性の強いカビ毒(アフラトキシン)を産生するものなどPenicillium と同様、種類により有益と有害をもたらします。

多くの種類の食品に分布しています。種類により集落の色調は緑、黄土色、茶、黒、白、青緑と様々です。

 

Alternaria sp.(アルタナリア) ススカビ

住居内では湿度の高いところを好んで分布しており、灰色~黒色の綿毛のような集落を作ります。野菜、果実に多く、それらの腐敗の原因となる植物病原菌であり、対象植物に対して特異的なかび毒を産生します。

 

Fusarium sp.(フザリウム) アカカビ 

湿度の高い浴室、洗面所やトイレなどに分布しています。白色、黄色、褐色、ピンク色、赤橙色、赤紫色など様々の色調の綿毛状集落と作ります。ムギ、トウモロコシの植物病原菌でもあります。数種類のかび毒の産生が知られています。

 

Wallemia sp.(ワレミア) アズキイロカビ

じゅうたん、畳など居住内の乾燥した環境に分布しています。食品では糖度の高い羊羹、アン、饅頭、カステラなどの食品、水産や果物の乾燥食品からよく検出されます。褐色~チョコレート色の比較的小さな集落を形成します。カビ毒は産生しません。

 

Eurotium sp.(ユーロチウム) カワキコウジカビ

我国での一般名のとおり、やや乾燥した環境を好むカビです。糖度または塩濃度の高い菓子類、ジャム、佃煮や米などの穀類、水産乾燥品などからしばしば検出されます。毒性の強いカビ毒の産生は報告されていません。

 

Aureobasidium sp.(アウレオバシジウム) 黒色酵母様菌  

酵母と間違えられやすいカビです。白色から次第に黒色の湿潤した集落となります。住居内では湿度の高いところに好んで発育します。食品中では清涼飲料水、果実、野菜などから検出されます。なかには食品添加物(増粘安定剤)として用いられる種類もあります。

 

食品の種類とカビ

食品の種類とその食品に存在するカビとはおおまかではあるがある程度の関係があるといわれています。

以下は、主な食品とその食品でよく発育するカビの種類です。

菓子類  Cladosporium   Wallemia   Penicillium   Eurotium
茶飲料  Cladosporium   Penicillium   Aspergillus  
果物ジュース       Penicillium   Cladosporium   Aureobasidium  
野菜ジュース       Penicillium      
穀類(米)  Penicillium    Eurotium   Aspergillus  
パン  Aspergillus    Penicillium    
餅  Cladosporium   Aspergillus    
水産乾燥品  Eurotium   Penicillium     Wallemia  
 練り製品  Penicillium   Cladosporium     Alternaria  
果物乾燥品  Penicillium   Aspergillus      Wallemia  
ジャム  Aspergillus   Penicillium   Eurotium  
チーズ  Penicillium       Cladosporium    

カビが発育するためには

カビが発育するためには次の5つの条件があります。

1.酸素

カビは酸素のあるところ(好気性)でのみ発育可能です。包装された菓子などに脱酸素剤が入っているのは菓子の酸化防止とともに、カビや一部の好気性細菌の発育を抑制するためです。

2.温度

一般にカビの発育可能温度は5~45℃で、冷蔵庫でも徐々に増殖します。しかし。最適温度は15~30℃の範囲であるため、この範囲を避けることである程度発育を抑制できます。

3.水分

食品中の水分はその形態から結合水と自由水に分類されますが、そのうち微生物が繁殖に利用できる水は自由水だけです。自由水の量が少なければ増殖できなくなり、逆に多くなれば増殖しやすくなりなす。食品中の自由水の量を水分活性という単位(自由水が多いほど1.0に近づく)で表わすことができます。大部分のカビは0.80前後以上で発育しますが(細菌は0.90以上で発育可能)なかには好乾カビは0.65でも発育可能です。そのため、種類によっては乾燥穀類、小麦粉でも発育するときがあります。

4.水素イオン濃度

カビの多くはpH 3~9で発育可能です。よく発育するのはpH 4~6の範囲で、弱酸性を好むものが多いようです。

5.栄養分

カビの発育には当然栄養分が必要です。食品のカビは食品成分そのものが栄養となるためカビが発育すればするほど食品は劣化します。

 

役に立つカビ

同じ名前のカビでもたくさんの種類があり、役に立つカビと害になるカビがあります。

コウジカビ(アスペルギルス Aspergillus)

 清酒、焼酎、みそ、しょう油、カツオブシなどの製造に使われています。

 

アオカビ(ペニシリウム Penicillium)
 チーズ(ブルーチーズやカマンベールチーズなど)の製造に使われています。
 また、抗生物質である「ペニシリン」の生産に役立っています。


酵母
 「真菌類」の中でも通常の形態が単細胞であるものを「酵母」と言います。
 パン、ビール、ワイン、清酒などの製造に使われています。

 

害になるカビ

食品に見られるカビ
「子のう菌類」のユーロチウム(Eurotium)、「不完全菌類」のアスペルギルス(Aspergillusいわゆるコウジカビ)・ペニシリウム(Penicilliumいわゆるアオカビ)・フザリウム(Fusariumいわゆるアカカビ)・クラドスポリウム(Cladosporiumいわゆるクロカビ)、「接合菌類」のムコール(Mucorいわゆるケカビ)など、食品にはさまざまなカビが発生します。

 

また、カビは病原真菌として人に真菌症という感染症を発症させるほか、カビの中にはカビ毒(マイコトキシン)と呼ばれる毒素を作るものがいて、それにより食中毒や癌を発症する事もあります。

カビ毒の中には次のようなものがあります。

 

アフラトキシン
アスペルギルス(Aspergillus)の仲間の一部が作るカビ毒で、発ガン物質です。国外から輸入されたピーナッツやピスタチオナッツなどの一部が汚染されることがあります。

 

トリコテセン系マイコトキシン(デオキシニバレノール、ニバレノールなど)
フザリウム(Fusarium)の仲間の一部が作るカビ毒で、悪心・嘔吐・下痢・腹痛・造血機能障害などを引き起こします。麦やトウモロコシが汚染されることがあります。

 

オクラトキシンA
アスペルギルス(Aspergillus)やペニシリウム(Penicillium)の仲間の一部が作るカビ毒で、腎臓や肝臓に毒性があります。穀類や豆類が汚染されていることがあります。

 

カビ毒は加熱調理で分解されません。そして、一般にカビは細菌と異なり低温、高浸透圧、酸性などの条件下でも生育し、胞子を空気中に飛散して増殖します。

カビの生えた部分を取り除いても食品全体が汚染されている可能性は高いので、カビの生えてしまった食品は食べないようにしましょう。

 

 

 

参考資料:   カビ対策ガイドブック 日本食品衛生協会 発行