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大阪湾・淀川の貝毒について

 

 shiohigari  

5月のゴールデンウイークのレジャーといいますと、「潮干狩り」が定番の一つです。

大阪湾や淀川では水質が大きく改善され、潮干狩りが大賑わいを見せています。

しかし、その時期に合わせたかのように貝毒の注意報が毎年、大阪府から発令されるようになり、貝を食べて食中毒を起こしたニュースも報じられています。

 

先人の言い伝えとして、「麦の穂が出たら浅蜊(あさり)は食うな」があります。 

麦の穂が出る初夏は、丁度アサリの産卵期にあたり、そのころにアサリを食べると食中毒を起こしやすいので、食べるときは細心の注意が必要だという意味がこめられています。

GWの潮干狩りシーズンは、まさにこの時期に当たるわけであり、厚生労働省や自治体が逐次発表する貝毒情報には十分注意して、個人で採取した貝をむやみに食べることは避けた方がよいでしょう。

 

貝毒ってそもそも何でしょうか?

アサリ、ハマグリ、シジミ、ムラサキイガイ、カキ、アカガイ、トリガイ、ホタテなどの二枚貝自身には、毒素を生み出す能力は持っていません。

 

ではなぜ、食用の貝が毒素を持ってしまうのでしょうか。

突然変異?ではなく、実は二枚貝の餌となるプランクトンが毒素を持っていることがあり、この有毒プランクトンは、生育条件が揃うと大量発生することがあり、その毒素を餌を介して貝の体内に濃縮・蓄積された結果、貝が毒化するのです。

毒化した貝でも、水中の有毒プランクトンの密度が低くなると、貝の体内から少しずつ毒が排出され、やがて無毒に戻ります。

 

有毒プランクトンによる毒化は、二枚貝以外の貝類、魚類、イカ、タコ、エビ、海藻類などには見られません。

ただし、トゲクリガニ(大阪府には生息していません)やイシガニは、麻痺性貝毒を蓄積した二枚貝を捕食して毒化することが知られています。

 

国内で主に問題となる貝毒は、「下痢性貝毒」、麻痺性の毒素を持ったプランクトンを捕食して毒化する「麻痺性貝毒」であり、有毒プランクトンの種類によって中毒症状も変わります。

海外では、他に「神経性貝毒」や「記憶喪失性貝毒」などがあります。

 

麻痺性貝毒

有毒プランクトンには、アレキサンドリウム・タマレンセ、アレキサンドリウム・カテネラ、ディノフィシス・フォルティなどがあります。

毒成分は、サキシトキシン、ネオサキシトキシン等多数

食後30分位で、口唇、舌、顔面の痺れ、手足にも広がる場合があります。

軽症の場合は、 24~48時間で回復します。

重症の場合は、運動障害、頭痛、嘔吐、言語障害、流涎等の症状が現れ、麻痺が進行すると呼吸困難で死亡することがあります。

毒化貝 :二枚貝のホタテガイ、ムラサキイガイ、アカザラ、アサリ、ヒラオウギ、マガキ等

 

下痢性貝毒

毒成分:オカダ酸とその同族体のジノフィシストキシン群

主に激しい下痢、吐き気、嘔吐、腹痛などの消化器系の症状です。

食後30分から4時間以内に発症して約3日程度で全快するとされており、国内の死亡例はありません。

毒化貝 :ムラサキイガイ、ホタテガイ、コマタガイ等。

 

神経性貝毒

食後数時間して、飲み物飲んだときに口内にヒリヒリ感があり、やがて、顔、のど、身体全体に広がり、酔った状態になります。

瞳孔散大、運動失調、下痢の症状が現れ、2~3日で回復します。

中毒症状は、主に胃腸、神経症状です。

 

貝毒は煮ても焼いてもだめ 

 

貝毒の蓄積は、外見や臭いからは判断できません。

また貝毒は熱に強く、加熱調理では分解されません。

現在、有効な治療法や解毒剤はありませんが、麻痺性中毒の場合、呼吸を確保して適切な処置が施されれば救命することができます。

 

※貝毒に関する詳細は厚生労働省ホームページ(自然毒のリスクプロファイル)をご参照ください。

 

貝毒の検査法

昨年の平成27年3月に「下痢性貝毒」の試験法が改正されました。

改正前は、抽出された毒素をマウスに投与し、貝毒の規制値以上か否かをマウスの生存・死亡で判定していたので、貝毒含有量についての定量的な分析が困難でした。

既に海外では、「機器分析法」が導入している国が多く、国内においても機器分析法の採用が検討され本改正により正式に導入されました。

本検査法は、抽出された貝毒を高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)と呼ばれる高感度な分析機器を用いて定量分析するものです。

下痢性貝毒の毒素は、オカダ酸群、ペクテノトキシン群、エッソトキシン群の3群がありますが、それらを分離して分析することが可能です。

 

下痢性貝毒及び麻痺性貝毒の規制値

 

二枚貝等の可食部1グラムに含まれる毒力又は毒量が下記の値を超えないようにします。

麻痺性貝毒:可食部あたり4マウスユニット/g

下痢性貝毒:可食部あたり0.16mg オカダ酸当量/kg

 

なお、下痢性貝毒については、当面の間、従来のマウス試験法とその規制値(可食部当たり0.05マウスユニット/g)が認められます。 

 

1MU(マウスユニット)とは、それぞれ次のように定められています。

麻痺性貝毒:体重20グラムのマウスが15分で死亡する毒力

下痢性貝毒:体重20グラムのマウスが24時間で死亡する毒力

 

人の致死量は体重60kgの人で約3,000から20,000MUと言われており、大阪府で平成28年4月5日に検出した毒量63MUをシジミの量に換算すると、約48から317gになります。しかし、それより少量の摂取でも症状がでるおそれもありますので、たとえ少量でも注意が必要です。

 

安全管理

貝の産地では、貝毒検査が徹底され、貝の生息水域のプランクトン調査も定期的に実施されており、検出された際は出荷停止等の処置が速やかにとられています。

大阪府では1週間ごとに貝毒検査を行い、3週間連続で国の規制値を下回っていた場合に安全宣言が行われます。

また、大阪府内の潮干狩り場では、潮干狩り用と持ち帰り用のアサリを区別し、来場者には安全なアサリを持ち帰っていただくなどの安全対策が講じられています。

 

しっかりと貝毒対策がとられて管理されている漁場や潮干狩り場などで採れた二枚貝だけを食べましょう。

 

 関連情報リンク

大阪府貝毒情報

貝塚市貝毒情報

尼崎市貝毒情報

堺市貝毒情報

愛知県貝毒情報 アサリ日本一の生産県として定期的なモニタリングが行われています。

農林水産省ホームページ(貝毒の対策) 

リスク管理について(農林水産省資料)[PDF]

大阪府立環境農林水産総合研究所水産技術センター 
兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センター
和歌山県資源管理課
三重県農林水産部水産資源課