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糞便中直接病原遺伝子検出法-マルチPCRの検討

 

今回、PCR法による糞便中から直接、Salmonella属菌、Shigella菌およびO157をはじめとするVero毒素産生性Escherichia coliを検出する製品、マルチPCR(TOYOBO社)と従来から実施している選択分離培地による培養法と比較検討したので報告する。

 

材料・方法

供試検体は本年9月、当研究所に各施設より提出された、培養検査済の糞便検体1500検体を対象とした。

既知病原菌としてShigella sonnei(1菌株)、Salmonella O4群、O7群、O9群(各1菌株)およびVero毒素産生性E.coli O157、O26、O111(各1菌株)をコントロールとして検査した。

尚、遺伝子増幅(PCR)法はTOYOBO社のマニュアルに準拠、50検体を混和し1プール(1検体)として測定した。

また、1プールにて陽性を呈したグループは各々検体を個々に培養検査を行い病原性菌の確認を実施した。

培養法はサルモネラ・赤痢検出用選択分離培地(SS寒天培地)と病原大腸菌検出用としてCT-SMAC寒天培地を使用、35℃・18時間培養後判定、疑わしい集落を生化学的性状および血清学的方法によって菌を同定した。

 

成績

培養済糞便1500検体中、Salmonella属菌陽性検体は5件(O4群、O7群・2検体、09群・2検体)であり、Shigella菌、Vero毒素産生性E.coliは全て陰性であった。

遺伝子増幅法(以下PCR法)は1500検体(1500/50:30プール)を実施した結果、培養法で検出されたSalmonella属菌5検体はすべてPCR法にても陽性を示し、1検体がPCR法:陽性 培養法:陰性(増菌培養;陽性)であった。

また、Shigella菌、Vero毒素産生性E.coliはPCR法も陰性であり、培養法と全て一致した。

尚、コントロールとして検査に供試したS.sonneiをはじめとする各病原性菌種は全てPCR法にても陽性を示した。

 

考察

本キットは糞便中の代表的病原性菌であるSalmonella属菌群;細胞侵入因子、Vero毒素産生性E.coli;Vero毒素VT1・2およびShigella菌(細菌性赤痢);病原性因子である各々の遺伝子を選定したものであり、検出感度は非常に高いと云われている。

特に近年、O157が大部分を占めていたVero毒素産生菌の血清型が多様化、O26、111に止まらず最近では欧州でのO104による食中毒事例も記憶に新しいところである。

この様に本毒素を産生するE.coliを検出するには、従来の培養法では稀な血清型の検出は難しい面もあるものの、本PCR法では原理的に毒素遺伝子の検出を行うため、あらゆる血清型に対応可能である。

 

今回、培養法とPCR法で1例の不一致がSalmonella属菌で認められたが、本検体のSalmonella菌が約10/gと非常に少ない菌量であり、通常の分離培養では糞便中常在菌によって隠蔽され、検出は極めて困難な状態であり、SBGサルモネラ選択増菌液体培地にて培養後再び、平板培地に塗抹培養を実施、検出可能となったものである。

故に、本事例から推測すると本PCR法は、Salmonela増菌培養法と同等の感度を有するものと考える。

 

本PCR法は各採便管からマイクロチューブに分注する処理過程に手間がかかり、培養処理する時間の約4倍を超える作業工程のため多大な労力を要する原因となった。

 

検査結果の解釈として、PCR法;陽性、培養法;陰性となった場合は培養検査での成績を優先すること。原因として、標的となる病原菌以外にも陽性になる菌の可能性は否定できない旨、本法開発の技術者より説明があった。故に、培養検査がゴールデンメッソド(標準法)であり、PCR法はあくまでも、現時点ではスクリーニング検査の域を出ず、従来通り培養検査は必須であると考える。

 

まとめ

1500検体中、不一致例はPCR法陽性・培養法陰性(増菌培養にては検出)のSalmonella属菌での1例を認めた。他は全て培養法とPCR法は一致した。

Salmonella属菌、Vero毒素産生性E.coli O157、26、111およびS.sonneiでのPCR法陽性が検証された。