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加熱で生成する「アクリルアミド」

 

アクリルアミドは、工業用品として汎用されるポリアクリルアミドの原料となります。

2002年、食品にアクリルアミドが含まれていることが明らかになり、各国は、食品にどれくらい含まれているのか、どうすれば減らすことができるのかなどに取り組んでいます。

 

何故、食品からアクリルアミドが見つかったか

1997年、スウェーデンのトンネル工事で水漏れが発生し、アクリルアミドを含む充填剤が大量に使われました。

その結果、工事現場近くの河川の魚が死んだり川の水を飲んだ牛が麻痺を起こすなどしたことから、トンネル工事の作業員の健康状態を調査しました。

すると、作業員の多くからアクリルアミドを呼吸や皮膚から大量に摂取・吸収していることが判明しました。

また、比較対照のために調査した汚染地域外の住民からも、血液中に低濃度のアクリルアミドが検出されたのです。

この調査結果から、トンネル工事による環境汚染に由来するものだけではなく、何か共通の汚染源が存在する可能性が考えられました。

そこで、更に調査研究を進めた結果、加熱した飼料を食べた動物の体内からアクリルアミドが検出されたことから、加熱した食品が原因として浮かび上がってきました。

しかし、なぜ加熱した食品にアクリルアミドが生成するのかは不明でした。

 

何故、アクリルアミドができるのか

スウェーデン政府はストックホルム大学と共同研究を行い、2002年4月、でんぷんなどの炭水化物を多く含む食材(じゃがいもなど)を高温で加熱するとアクリルアミドが生成されることを発表しました。

この発表を契機として、食品安全に関わる問題として各国が研究に取り組んだ結果、高温調理によって、アミノ酸の一種であるアスパラギンと、ブドウ糖や果糖などの還元糖が反応してアクリルアミドが生成されることが明らかにされ、多くの食品に含まれていることも分かってきました。

 

食品に含まれるアクリルアミド

 

アクリルアミドが、食品にどれくらい含まれているかの実態調査は、各国で行われています。

国内では、農林水産省が中心となって調査が行われており、フライドポテト、ポテトスナック、ビスケット類など多くの食品にアクリルアミドが含まれていることが分かりました。

EFSA(欧州食品安全機関)は、コーヒーやパンにも含まれていると公表しています。

また、家庭内の調理でも、例えば、焼き菓子、トーストしたパン、炒め調理などでアクリルアミドができることが分かっています。

我が国の主食である米飯は、炭水化物を多く含む食品ですが、アクリルアミドは、120℃以下ではほとんど発生しないので僅かしか含まれていないことが分かっています。

我が国では、食品関連事業者が自主的にアクリルアミドの低減に取り組んでおり、例えばポテトチップスでは、ここ数年間でアクリルアミド濃度の中央値及び平均値が4~6割減少しています。

 

工業用原料のアクリルアミド

 

アクリルアミドは、白色で無臭の固体で、接着剤や塗料などに用いられるポリアクリルアミドの原料です。

IARC(国際がん研究機関)は、アクリルアミドを、「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と分類しています。

日本では、「劇物」(※)として指定されています。

 

※「毒物及び劇物取締法」(昭和25年12月28日法律第303号)に基づき、医薬品及び医薬部外品以外のもので、動物又は人に対して毒性が高いとされる物質

 

加熱生成するアクリルアミドのリスク評価

国際的なリスク評価機関であるJECFA(FAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)合同食品添加物専門家会議)やEFSAは、発がん影響に関する懸念があり、食品中に含まれるアクリルアミドの量を低減するために適切な努力を続けるべき、などとしています。

食品安全委員会では、2011年3月、「加熱時に生じるアクリルアミド」について、「自ら評価」(※)を行うことを決定し、化学物質・汚染物質専門調査会で検討が行われています。

 

※厚生労働省や農林水産省などのリスク管理機関からの要請を受けて行うのではなく、食品安全委員会がリスク評価の対象案件を自ら選定して行うリスク評価。

 

食品中のアクリルアミドを減らすためには

加熱調理した食品からアクリルアミドを完全に取り除くことはできません。

しかし、アクリルアミドによる健康被害の発生を未然に防ぐには、食品のアクリルアミド濃度をできるだけ低くし、食品由来の摂取量を減らすことが重要であるという観点から、農林水産省は、食品関連事業者向けに「食品中のアクリルアミドを低減するための指針」を作成しています。

この指針には、例えば、還元糖濃度の低いじゃがいもを使用する、低温で保管すると還元糖が増えるので適切な温度で保管する、アクリルアミド濃度ができるだけ低くなるように最適な加熱温度と加熱時間を設定するなどの低減対策が示されています。

家庭内では、食材を長時間揚げたり焼いたり炒めたりしないこと、じゃがいもは冷蔵庫ではなく冷暗所で保管することなどが大切です。

 

Q&A

アクリルアミドとはどんな物質ですか?

アクリルアミドは、主に、紙力増強剤、合成樹脂、土壌改良剤、接着剤、塗料等の原料として広く用いられているポリアクリルアミドの原料です。

無臭の白色結晶で、室温では安定していますが、紫外線や熱によってポリアクリルアミド(※)になります。

 

※1分子のアクリルアミド(モノマー)が二つ以上結合した化合物

 

なぜ、アクリルアミドが食品の安全に関して話題となっているのですか?

主に工業用品の原料に用いられ、神経への影響が指摘されていたアクリルアミドが、炭水化物を多く含む食材を高温加熱した食品に生成され多くの食品に含まれていることが、最近分かってきたことで注目されています。

食品からの摂取量の推定や低減策について、各国で取組が行われています。

EFSA(欧州食品安全機関)は、今年の6月に「食品中のアクリルアミドに関する科学的意見書」を公表しています。

国内では、現在、食品安全委員会がリスク評価を行っています。

 

アクリルアミドは健康へどんな影響があるのですか?

今までのところ、食品中のアクリルアミドが原因と特定されたヒトの健康被害の例はありません。

動物を用いた実験では、極めて高用量のアクリルアミドを投与した場合に発がん性が報告されていることから、ヒトに対しても発がん性を有する可能性が考えられています。

IARC(国際がん研究機関)では、アクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質」に分類しています。

スク評価の国際機関であるFAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、2005年と2010年にアクリルアミドについて評価を行い下記の声明が出されています。

① 通常推定される平均的な量を摂取してもヒトの健康に有害な影響を与えないが、極めて多量を摂取した場合は、神経組織の障害を引き起こす可能性がないとはいえない。

② 遺伝毒性及び発がん性の可能性は否定できない。

 

どのような食品に含まれているのですか?

アクリルアミドは、炭水化物を多く含む食品を高温(120℃以上)で加熱調理することにより、生成される可能性があります。

例えば、ポテトチップス、フライドポテトなどジャガイモを揚げたスナックや料理、ビスケット、クッキーのような焼き菓子、あるいはコーヒーなどに比較的多く含まれていることが報告されています。

 

加熱しなければアクリルアミドはできないのですか?

加熱していない生の食材にはアクリルアミドは含まれていません。

120℃以上の高温で、揚げる、焼く、焙(あぶ)る際に生成され、ゆでたり、蒸したりした食品にはアクリルアミドが含まれていないか、含まれていても極微量であることが報告されています。

なお、食品ではありませんが、私たちが接する身近なものとしては、タバコの煙にもアクリルアミドが含まれています。

 

アクリルアミドが含まれている食品を食べても安全でしょうか?

食品安全委員会では、日本人が食品からどれくらいのアクリルアミドを摂取しており、そして健康にどのような影響を与えているのかについて、現在評価しているところです。

食品関連事業者の一部は、すでにアクリルアミドを低減する取組を行っています。

家庭で調理する時は、長時間揚げたり焼いたり炒めたりしないこと、また、じゃがいもは冷蔵庫ではなく冷暗所で保管(※)することが大切です。

食品にはアクリルアミドのほかにも、摂りすぎれば健康に影響を及ぼす様々な物質が含まれています。

特定の食品に偏ることなく、バランスのとれた食生活を送ることが大切です。

 

※じゃがいもを冷蔵庫で保管すると、じゃがいもに含まれているでんぷんが分解してアクリルアミド生成の原因となる還元糖が増えるためです。

 

バランスの良い食生活

アクリルアミドは、食品を加熱することによって生成します。

そのため、人類は、食物を油で揚げるなど高温で調理するようになってから、食品中に微量に含まれているアクリルアミドをいつも摂ってきたと考えられます。

一般的に、食品には、アクリルアミドのみならず、カビ毒であるアフラトキシン、重金属のカドミウムやヒ素、じゃがいものソラニン等の様々な有害物質が微量に含まれていることがあります。

栄養素の過剰又は不足によっても、健康への悪影響は増加します。

アクリルアミドの摂取をゼロにすることは困難ですが、食品から摂取するアクリルアミドを減らすためには、特定の食品に偏った食生活にならないように気を付け、バランスのとれた食生活を送ることが大切です。

 

食品安全委員会e-マガジンより転載

 

(参考)

ファクトシート「加工食品中のアクリルアミド」

http://www.fsc.go.jp/sonota/acrylamide-food170620.pdf

季刊誌vol.14 アクリルアミドに関するファクトシートの概要について

http://www.fsc.go.jp/sonota/14gou_3.pdf

EFSA アクリルアミドとその低減方法に関するインフォグラフィックス(ピックアップ海外情報 平成26年10月7日報告)

http://www.fsc.go.jp/pickup_overseasinfo/pickup_overseasinfo.html

EFSA 食品中のアクリルアミドに関する科学的意見書を公表

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04270050149

農林水産省 食品中のアクリルアミドに関する情報

http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/index.html

農林水産省 食品関連事業者向け「食品中のアクリルアミドを低減するための指針」

http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_gl/sisin.html

厚生労働省 加工食品中アクリルアミドに関するQ&A

http://www.mhlw.go.jp/topics/2002/11/tp1101-1.html